選挙制度分析

私の主張

比例代表制選挙(拘束名簿方式)を国会はもちろんのこと、地方議会にまで導入し、さらに地方の行政機関は、議員内閣制的な制度を目指すべきことを、明確に 市民に提示している候補者または集団を支持します。

※その根拠は・・・

■ 憲法研究会の「憲法草案草稿」(1945年12月27日)に次の文章があります。

議会
1.議会ハ二院ヨリ成ル。
1.第1院は全国1区の大選挙区制ニヨリ満20歳以上ノ男女平等秘密選挙(比例代表ノ主義)ニヨリ満20歳以上ノ者ヨリ公選セラレタル議員ヲ以って組織サ レ其ノ権限は第2院ニ優先ス。

■ 日本共産党の「日本人民共和国憲法」(草案:1945年11月11日)に次の文章があります。

第48条
 代議員の選挙は、比例代表制にもとづき平等、直接、秘密、普通選挙によって行われる。
第77条
 地方制度は、第47条、第48条を基準とする選挙法によって選挙される地方議会(村会、町会、市会、県会等)を基礎として運営される。
第78条
 各級の地方議会は、それぞれの行政機関を選任する。行政機関は、それぞれの地方議会ならびに上級機関に責任を負う。

(注:下線部が議員内閣制的な制度を示してしています。つまり市長や知事は、首長選挙で決めるのではなく、議員の中から議会が決定することになります。内 閣総理大臣の決定方法と同じです。)
 
立候補者個人でなく政党や会派(地方)を選ぶ比例代表制の利点

■ 地方議会選挙で議席配分を受ける最低得票率(足切り)をなくせば、少数会派も得票率に応じて議席配分されるので、不利にはならない。
■ 立候補しても政党名簿に記載されるだけで、個人的な選挙活動に今ほど負担がかからない。当選後に仕事を休職すればよいし、公職を離れたら元の会社に復 帰できる制度が整っている。市議会が夜開催されるので、昼間は正規の仕事に就き、市議職はボランティアで賃金も非常に低い。
■ 政党が作る立候補者名簿では男女交互に配列し、得票率に応じて議席が上位から配分されるので、女性議員の割合を多くすることも可能となる。つまり民意 を反映した女性議員が多くなるということだ。
■ 政策の最終的決定権が個人にある場合、有権者が知らぬ間に政策や考え方の変更がなされる可能性がかなりあるが、政党という集団であれば、会議で決定さ れるので、個人の場合と比較して、政策変更の透明性が増す。
■ 最終的に政党や会派の決定に従うにもかかわらず、それを隠して、自分の主張を最後まで貫き通すかのような態度を示す。それを信用した有権者が裏切られ るような場合も多い。当選者は離党することはないのだから、ならば立候補者の主張や人柄ではなく、属する政党に投票すればいいことなのだ。

[民意を比較的よく反映する大選挙区制(市議選など)の落とし穴]

■ 会派に複数立候補者がいる場合、特定候補者に票が集まりすぎ、他の候補者が落選することがある。そこで「票割り作業」として、有権者に事前に電話をか け、支持者であれば、票の偏りを防ぐための投票行動を指示する。予定通りに事が進むと、めでたくも得票率に応じた議席獲得ができる場合もあるが、見込みが はずれると落選者を必要以上に出してしまうこともあり、この調節は非常に難しい。比例代表制であれば、こうした事前の策は必要ない。
■ 立候補者が多いと1人ひとりの政策の比較が極めて難しい。政党を選ぶ方が余程、判断しやすいだろう。

[県議選などの中選挙区制の落とし穴]

■ 選挙区定数分しか立候補者がいなければ、選挙は実施されず当選が確定する。だから地元有力者は利益誘導や脅迫をして、立候補を断念させることがある。 対象が少人数なので圧力をかけやすい。2003年4月13日に実施された千葉県議選では、定数98人の47選挙区中、17選挙区の22人が無投票で当選。

■ 立候補者は自分の当選を最終目標にするが、応援者たちにしてみれば、選挙での勝敗も重要ではあるが、それ以上に納得のいく選挙運動を通して世直しをし ていきたいという気持ちが強い。本末転倒なのだが「何を有権者に訴え、何を訴えないことが最大の得票をもたらすか?」 立候補者の指図にもとづいたそんな 安易な選挙運動には、応援者としてはかり出されたくないものだ。政党を選ぶ選挙であれば選挙運動における両者の考え方の違いは問題とならない。なぜなら選 挙運動方法についても、みんなで決定するからだ。

首長(知事、市長など)選挙はなぜやめるべきか

■ 権力が少数者に集中するほど、金銭授受や脅迫による裏取引が起こりやすくなる。
■ 下記の弊害を生む首長選挙に莫大な労役、紙などの資源、経費・税金を使うのはあまりにもむなしいことで、「民主主義にはお金と時間がかかるものだ」と いう考え方では納得できない。

[民意切り捨て型選挙の負の連鎖]

 二位以下の票は当選に結びつかない死票となるため、民意を反映しない。⇒落選がほぼ確定的な立候補者は、当選予定勢力に相乗りして、お互いに利権を分け 合った方が得策だ。⇒立候補者が減少し、選挙は無投票か、一方だけが有利なワンサイドゲームになりやすい。⇒悪政だと分かっていても、地方自治の自浄能力 は低下してくる。⇒執行権を持つ市長の独裁政治となっても、議会によるチェック機能が低下。⇒構造的悪政を生む制度であっても「民主主義選挙」とマスメ ディアから正当化されれば、「このような不適当な人物を首長に選んだ市民が最も悪い」とされ、これでは市民は無力感に陥るしかない。そもそもの原因とし て、首長選挙は地方行政のあり方を悪しき方向に決定づけてしまうからなのだ。

[政策の不明確さこそが支持を拡大させる]

政策がはっきりするほど、支持は減少していく一方で、その政策に対する反発は増大していく傾向にある。「世論」までもコントロール可能な権力者たちは、選 挙の争点をずらしたり、相手候補の政策に対して集中的な批判や反対キャンペーンを展開することで、相手の支持層を離散させやすい。⇒「総花的政策」「イ メージ選挙」にした方が、むしろ大衆の支持を獲得しやすい。「脱政党」「無党派」を強調することで政策の不明確性を隠してしまう。民意の最大公約数的政策 を主張することで、最大の支持を得られる可能性がある。⇒理想政治を目指して自主的に選挙運動にかかわる人々と、当選を目指す立候補者との間に格差が広が る。⇒「候補者から利用されたにすぎない」という裏切られた気持ちを抱く支援者も出てきかねない。

[政策理念が似ている良心的会派同士こそ首長選挙協力は成立しにくい]

利権会派同士は首長選挙で協力しやすい。なぜなら、理想的な政策実現より、利権確保が優先するからだ。しかし良心的会派は政策実現を優先し、そのため勢力 を伸ばす必要がある。首長選立候補者が属する会派を他の会派が応援すると、両者の地位の優劣が顕在化して、自勢力を衰退させることにつながる。これがその 後の市議・県議選に影響を与えるので、選挙協力は敬遠される傾向がある。
 市長選立候補者が落選した後の市議選などに、その当人が立候補した場合、かつて市長候補として、その人を応援活動していた現職の市議などは、大きな痛手 を被ることになる。なぜなら、落選したとはいえ、みんなに応援されて市長に立候補したのだから、市民感情としては、実力がかなりあるということになる。一 票しかない票は、応援者よりも市長落選者に向かうだろう。このような憂き目を見ないためには、市長選には関わらないことだと消極的になるだろう。

小選挙区従属型二大政党制の弊害

■ 「寄らば大樹の陰」で大きな集団に対してある種の安心感を持つのは人間の自然感情だが、小選挙区制は二大政党制を半ば強制する。有権者は死票を恐れ、 少数政党への投票を敬遠したり、棄権したりする。自分の票が当選に結びつけば自己の存在感を確認できる。自分の考えや良心に従って投票しても無駄であるな ら、自分をごまかして「死票」を避ける。
■ 二大政党以外から立候補させれば、「死票」は「批判票」になるといっても、所詮「犬の遠吠え」にすぎない。二大政党間だけの政権交代で効果的な政治の チェック機能を果たせるのか?
■ 少数政党は「死票」の山を築く反面、二大政党は得票率以上の議席を獲得できる魔法の箱だ。だからこの小選挙区制に賛成するのだ。
■ 事前世論調査である政党の当選が確実であると判明すると、それに反対の有権者が投票する意味がなくなる。だから投票率が上がりにくい。
■ 新しい理念に基づいた政策実現を求める「政権交代」はまったく不可能だ。比例代表制では1つの政党が過半数の議席を獲得できない場合が多いから、連立 内閣を組むが、第3、第4政党との連立の方が、大きな変化をもたらす可能性のある政権交代になるだろう。
 二大政党だけの政権交代は真に茶番劇で、1回目が今よりましでも、2回目でさらに悪化した政治になるかもしれないのだ。他の政党は死に近づきつつあり、 もう回復は期待できないのだから。
■ 二大政党は二大政党制を維持するために国民に強烈なマインドコントロールをかけるだろう。二大政党が最も恐れるのは、相手政党ではなく、新しい理念を 持った新しい政党の台頭なのだ。
 欧州では「中道左派連合」と「中道右派連合」による政権交代が一般的だ。どちらがよりよい可能性を秘めているかについては、一目瞭然だろう。

比例代表制選挙による地方議員が首長(複数の場合も)を互選する利点(ヨーロッパ型)

■ 互選で首長を決定するのは、間接的だが、原理的には民意の総体に対応した政治が行われる。
■ 権力が一人に集中しないので、政策運営の透明性が高まる。対象議員が多数いるので、脅迫や裏取引が物理的に困難。
■ 本人の病気や家庭の事情など、プライベートな都合で首長職を辞したとしても、後任者はすぐに決まるので、精神的負担も軽くなる。
■ 強大な権力を持つ首長選挙がないと、地元の会社どうし、市民間の利害対立が弱まるので、利益誘導を求める人々の競争意識も弱まり、平穏な地域生活が送 れやすい。暴力団などのかかわりも自ずから弱くなるだろう。

田口房雄